BNR32とは

■ プロローグ

GT-R。それは速さへの挑戦である。
圧倒的なエンジン・パワー、卓越したハンドリング、
優れたスタビリティ、そして高剛性ボディ。
そのひとつひとつのプロセスに、凝縮されたテクノロジーが、
エンジニア達の熱いスピリットが注ぎ込まれている。
数値で表現される無味乾燥な速さでは、決してない。
測り知れない奥の深さと、息づまるような濃密な一体感を、
乗る人すべてに与えずにはおかない、正真正銘の速さなのだ。
GT-R。夢が現実になる。


(1989年8月発行の初期型カタログより引用させて頂きました)
1989年発行の初期型カタログ(もしくは複製)をお持ちの方は、ぜひ今一度お手元で開いて頂きたい。今となってはなかなか貴重なこのカタログ、表裏共、何故かBNR32の行く手には暗雲が立ちこめている。そして後半の技術的解説に移るまでの幾つかの写真も、ほとんどが雨模様である。これは一体何を意味するのか?まさか「たまたま撮影の日が雨だったから」という理由ではないと思うのだが、そこには何か明確な意思が込められているような気がしてならない。目の前に立ちはだかる暗闇。そしてその先にあるものとは?そこには開発に携わった全ての人間の「その暗闇の先にあるものへの自信」が込められているような気がしてならない。さて、あなたにはその先に何が見えるだろう?

■ 究極のロードゴーイングカー
1969年、R380のデチューンと言われるS20を搭載した「初代GT-R(PGC10、KPGC10)」が誕生。「R」の冠は73年に2代目に引き継がれるが、厳しい排ガス規制とオイルショックによりレースに参戦せぬまま、わずか200台(推定)で生産中止された悲劇のスカイライン「ケンとメリーのスカイライン(KPGC110)」で途絶えてしまっていた。1989年夏、16年の沈黙を破り復活した「GT-R」。市販車ながら最高出力280PS、最大トルク36kg-mというスペックを誇るパワーユニット、ワイドタイヤを可能とするブリスターフェンダー、大型のリアスポイラーをまとったフォルム、強大なパワーを確実に路面に伝えるべく採用された4WDシステム。全ては「グループAで勝つ為に」。究極のロードゴーイングカー、それがBNR32なのである。

■ オリジナルからファイナルへ
日産自動車発行のカタログを順に追ってみると、1989年8月に発売されたオリジナルモデルはボディカラー全5色が設定され、そのうちジェットシルバーメタリック(KG1)は初期型にしか存在しない。翌1990年3月にグループA参戦の為のホロモゲーションモデルである「NISMO」を発売。1991年7月に「N1ベース車輌」を設定、8月に安全装備を充実させ車体色が追加される(ここから中期型とも呼ばれる)。1993年1月、2度目のマイナーチェンジが施される。ここからが後期型と呼ばれるが、同時に標準車とは別にグループA3連覇を記念した「Vスペック」が投入される。同年夏にR32型スカイラインはR33型スカイラインへとバトンタッチされるが「GT-R」のみ継続生産。N1ベース車輌もVスペックをベースとしたものに変更。1994年2月、ファイナルバージョンである「VスペックU」が投入される。

■ 後世への問いかけ
1995年1月BCNR33へとバトンタッチされた「GT-R」の称号は、1999年1月にBNR34へ受け継がれ「わずかばかりの休養」を経た今年(2007年10月)、新たな装いをまとい再び咆哮をあげる。「GT-R」という車。「最新のGT-Rが最強のGT-R」と呼ばれるが、この歴代『GT-R』の系譜を辿ってみると今期発売される「新型GT-R」は明らかに違う世代に突入した事が判る。工業製品は新しく設計・製造されたもののほうが高性能である。しかしながら、世に与えたインパクト・人の心を震わすほどの感動。これらを備えたまま、後世まで語り継がれるモノはごくわずかに過ぎない。あるものはそれを越えようと試み、あるものはその呪縛から解き放たれたいと願う。その全ては何処から来ているのか?その道を辿ってみれば、結局最後にたどり着く「頂」があるのに気がつくだろう。いよいよ第3世代にバトンタッチされる「GT-R」。その称号が第4世代、第5世代と受け継がれる事を願ってやまないが、その血脈の中で果たしてどれだけの車が後世まで語り継がれて行くのであろう?ただ一つ言える事。それはたとえ世代が変わろうと血脈が途絶えようと、BNR32は間違いなく「名車と呼ばれ続ける」と言う事だけである。

■ 総生産台数
 43934台

■ タイプ別総生産台数
標準車 40390台
NISMO 560台
Vスペック 1453台
VスペックU 1303台
N1ベース車輌 228台

■ 車体番号区分
初期型 BNR32-000051〜017466
中期型 BNR32-212001〜
後期型 BNR32-300001〜314649
NISMO BNR32-100001〜100560(市販は500台)

■ 年式別登録台数
1989年 4555台
1990年 8426台
1991年 7081台
1992年 7961台
1993年 6204台
1994年 7465台

■ 最終生産車のラインオフ日と車体番号
標準車 BNR32-314649
Vスペック BNR32-313609
VスペックU BNR32-313930

Copyright(C)2008 The 32Hozonkai All Rights Reserved.